宇宙部会を開催しました!(9月8日)

RobiZy宇宙部会

2026年9月8日(火)、宇宙部会を開催しました(第26回)。

宇宙探査イノベーションハブの進捗と標準化の検討、宇宙プロジェクトの紹介、国際宇宙ステーション(ISS)での実証事例など、盛りだくさんの内容となりました。

■ 活動方針と今後の予定

宇宙部会長の伊巻氏(株式会社2moon)より、今年度の活動方針として、宇宙ロボットを中心としたプロジェクトの創出と、宇宙ロボットに関わる国際規格の検討を進めること、そしてRobiZyの会員企業が収益を得られる仕組みづくりを重視することが改めて共有されました。フィジカルAIについては、宇宙分野・非宇宙分野の双方から相談が寄せられており、ハードウェアとAIの両方を扱える企業が少ないことは機会でもあると認識されています。

また、宇宙技術戦略に協調ロボットに関する文言が入り、ロボットのインターフェースなどの標準化・規格化も加わったことが報告されました。今後の予算化を見据えて、プロジェクトの形成を進めます。

■ 探査ハブ:月面物流ローバーと標準化

JAXA宇宙探査イノベーションハブの「月面物流ローバー」の研究開発と、その共通基盤・標準化を進める3年間のプロジェクトについて、進捗が共有されました。RobiZyは、「オープンプラットフォーム化とコミュニティ形成」を担当し、ハードウェア、故障予測診断、ソフトウェア、自律移動技術の成果を整理して、再利用可能な仕様や標準化項目にまとめる役割を担います。

標準化は、ゼロから作るのではなく、地上ロボットの安全基準・相互運用の考え方や、宇宙システムの既存の基準・規格を調査し、整理の方法を活用する方針です。現在は、ローバー同士、ローバーと月面設備、ローバーと地上の運用系の接点を対象に、接続、運用、情報、継続利用といった観点から標準化の候補を整理しています。学会では、「宇宙ロボットの共同運用を支える共通標準化レイヤー」を発表する予定です。今後、標準化について幅広い企業・機関が参加できる協議の場を設ける準備も進めており、詳細は決まり次第、ご案内します。

■ 探査ハブ:標準化ワークショップ

JAXA宇宙探査イノベーションハブの事業に関連して、月面物流を題材にしたワークショップでは、次のような論点が出されました。

  • 月面で必要になる物流の例として、保守用の部品、機密性の高い媒体、月の鉱物を使って現地で製造したモーターなどの輸送が挙げられました。
  • 荷物の保護(振動・温度・放射線)、輸送中の状態を把握するセンサー、故障原因を追跡できるトレーサビリティが重要という意見がありました。
  • 機密性の高い媒体の配送では、正しい相手だけが受け取り・開封できる仕組みが論点になりました。
  • 経路計画や自律走行には、自己位置の推定や地形データが必要です。現状は精度に制約があり、ローバーごとに積載物や寸法も異なるため、通行可否の判断に必要な情報の共通化が課題として挙げられました。
  • 通信の遅延やセンサーの誤差を前提に、ローバーが自律的に判断する必要性や、そのインターフェースの共通化が議論されました。

■ 参考:レゴリス(月の砂)への対策

議論の中で出てきたレゴリスは、機械の駆動部、カメラ、センサー、人の健康に影響を及ぼし得るため、月面物流やロボット運用の重要な課題として共有されました。アポロ計画の報告では、視界不良、健康被害、機械の動作不具合、清掃作業の必要性などが示されています。レゴリスは粒子が細かくて尖っており、静電気で付着しやすい点が特徴で、対策の基本は「持ち込まない」「付着物を除去する」「機器をレゴリス対応の仕様にする」の3点とされました。除去技術の多くは研究段階にあり、除去や保守の基準・サービスは将来の事業機会になり得るとの意見もありました。

■ シナノケンシ様、宇宙用ブロワーのISS実証

長野県のモーターメーカー、シナノケンシ様より、宇宙向け製品の開発事例が紹介されました。宇宙事業は2020年に開発を開始し、リアクションホイール、トルクロッド、ステッピングモーター、ブロワーなどを展開しています。このうちブロワーは、ISSの二酸化炭素除去装置の中で空気を送る用途に採用され、昨年10月の打ち上げ後、ISS上で約半年間、2,300時間にわたって稼働しました。

開発では、宇宙用部品のデータベースに基づく部品選定、真空・熱真空・振動・衝撃・放射線などの環境試験、材料証明を含む書類・記録の整備が負担になったといいます。民生品を宇宙で使う場合は、宇宙用として保証済みの部品を使うか、未保証の部品を自ら立証するかが重要な判断になります。また、宇宙市場に参入する際は、従来型の宇宙市場とニュースペースのどちらを主な対象にするかを、早い段階で決めることが大切だという助言がありました。

■ IRT様、ISSでの「宇宙兄弟」描画プロジェクトの裏話

IRT様より、「宇宙兄弟」の完結を記念して、ISS内でロボットアームがカバン上の紙に絵を描く企画の紹介がされ、ISS上で3枚の描画に成功しました。地上で受け取った原画データをもとに、ISSの民間利用ブース内の6軸ロボットアームで描画したものです。

使える機材には制約があり、指定された小型ロボットアーム、1種類のペン、Windowsの制御コンピューターを使う必要がありました。当初は1〜2か月で完了する想定でしたが、逆運動学の解が一意に決まらないこと、ペン先が平面からずれると筆圧が変わること、Windows環境で正確な20ミリ秒周期の制御を行う難しさなど、多くの課題を乗り越えるために約1年を要したとのことです。宇宙飛行士の作業時間や通信環境の制約から、問題が起きた後の再試行にも1〜2週間かかるなど、ISSならではの苦労も紹介されました。

■ 次回に向けて

次回の宇宙部会は12月15日(日本橋を予定)で、忘年会も予定しています。宇宙科学技術連合講演会の簡単な報告のほか、宇宙技術シリーズとして、地上部品の宇宙化、地上システムと宇宙システムの品質管理の違い、熱設計のポイント、JAXA設計標準のテーラリングなどのテーマを検討しています。発表を希望される方は、事務局までお知らせください。